かんがえごと
著作権法違反で、逮捕者が出てしまいましたね。
記事だけでは、逮捕に至るまでに経営者とJASRACの間にどのようなやりとりがあったのかは分かりませんが、JASRAC側からすると、悪質だったということでしょう。
見せしめ的な面もあるような気がします。
少し前になりますが、私の知り合いが演奏していたピアノバー(というより、ピアノが置いてあって、たまに演奏のあるバー)にもJASRACから警告(?)がありました。
オープンして2年ほどのお店だったのですが、利用許諾契約を結んでいなかったため、それまでの著作権料を請求されたそうです。
ピアノバーの経営者はその著作権料の計算方法が気に入らなかったらしく、難癖をつけてしばらく無視をし続けたところ、裁判所に呼び出されてしまいました。で、結局支払うことに。
そのまま放置してしまっていたら、記事の経営者同様逮捕に至ったかもしれません。
そのバーの経営者がJASRACのやり方で一番気に入らなかったのは、それまでどんな曲を演奏しているのかもろくに調べもせず、店の広さと席数、そしてほんの数日調査した客入りや演奏時間で、“お役所仕事的”に2年分の著作権料を請求してきたことだったそうです。
そのあたりの疑問を、「そんないい加減な調べ方で、本当に著作権者にきちんと支払われているのか?」とJASRACに尋ねたら、「そういうこと(著作権料の分配方法のこと?)を含め、我々に委託されている」という回答が返ってきたそうです。
その経営者、この一件が相当頭にきたらしく、店を閉めてしまいました。
私の友人は、仕事場をひとつ失ってしまったというわけ。
ここ数年の著作権に関するニュースには、気分がどんよりしてしまいます。
個人MIDIサイトへの課金だとか。
ミッキーマウスとか。
日本でも著作権の保護期間を50年から70年に延長するよう求める声だとか。
……
私は、著作権を守ることは必要だと思っています。
音楽等著作物の作者にとっての収入源ですし、その著作物を使用して何らかの利益が得られる場合は、著作者にも還元されるべきでしょう。
そして、著作権の管理は個人では不可能ですから、JASRACのような著作権管理団体も必要だと思います。
現在の著作権法のあり方には疑問も多々ありますが、「悪法もまた法」だと思っているので、個人的にはなるべく守るようにしています(引用の仕方など、怪しい部分もある気がしますが…)。
でも…
「悪法もまた法」だとはいえ、何だかひどく歪んできてはいないか?と思うのです。
「著作者の利益を守るための法」という立場が、どんどんはみ出していっている気がします。
個人MIDIサイトへの警告は、幸い私のサイトはパブリック・ドメインの作品ばかりでしたので問題ありませんでしたが、その様子を人に聞き、「そこまでシビアに取り締まるのか」と驚きました。
確かに、著作権保護期間の作品を無断で公開しているので、(JASRAC側の立場からすると)正当な警告だとは思います。
でも、その多くは非営利のサイトで、公開することで利益を得ることは少ないでしょう。
またMIDIで複製されたものを聴いたからといって、オリジナルの利益を損なうことはないのではないか?寧ろ、MIDIを聴いてオリジナルに興味を持つこともあるのでは?と思っていました。
それでも、「悪法もまた法」なのだから仕方がない。しかし随分と世知辛い世の中だなあ…と、当時は暗い気分になりました。
そして今、日本の著作権の保護期間を欧米並みに延長しようとの声が出てきています。
文芸家協会や日本美術家連盟,日本音楽著作権協会,日本写真家ユニオンなど、著作者の関係団体が結束して文化庁に要望書を提出した。というニュースが、9月に流れました。
ミッキーマウスの“寿命”がたびたび延びること。これもひどい話ですが、ディズニー社の立場で考えると分かるのです。
だって彼らは、ミッキーやプーさんによって利益を得ているわけですから。
もしミッキーがパブリック・ドメインになってしまったら、ディズニー社の利益は激減してしまいます。
だから躍起になって保護期間を延ばしている。ひどい話ですが、「理解(賛同の意味はありません)」はできます。
でも今回の、著作者が自分の作品の保護期間を70年に延長するよう求めたことは、理解できません。
要望書では、「50年とある権利の存続期間をそれぞれの起算点から70年とする」とあるので、著作者の死後70年ということでしょう。
要望書には、以下のような理由が添えられています。
著作権保護期間は、ロシアを除く主要国のほとんどで著作者の死後、あるいは公表後70年になっており、わが国が50年に止まっている現状は、著作権保護の国際的均一性を妨げています。
特に、ネットワーク上のコンテンツの流通が進む中、著作権者の本国では保護される著作物が、日本では無許諾で利用できることになりかねません。
また、知財立国が叫ばれておりますが、その根本にあるのは著作者の想像力であり、知財立国の実を挙げるためには、保護期間の延長により著作者への利益の還元を主要国並のレベルにそろえることが必要です。
なお、特に音楽においては、著作物を広く享受してもらうためには実演家、レコード製作者の存在が不可欠であり、保護期間について著作隣接者にも著作権者と同等の権利を与えなければ実効性に乏しいものとなってしまいます。
コンテンツ・ビジネスにおいては、今後、ボーダーレス化がいよいよ進展するものと考えられ、国際協調を図りつつコンテンツ・ビジネスを発展させていくために、著作権及び著作隣接権の保護期間延長は是非必要と考えます。
「著作権分科会法制問題小委員会(第2回)議事録」より
関係団体からの著作権法改正要望について(概要) 5.保護期間(106~108)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/04093001/002.htm
結局、著作権延長の一番の理由は、「他の国がそうだから」ということでしょうか?
ですが、他の国のその法は、本当に適切なのでしょうか?
足並みだけ揃えるのが良い方法ですか?
著作者に直接関わる理由は、“知財立国の根本にあるのは著作者の想像力だから、保護期間の延長により著作者への利益の還元を主要国並のレベルにそろえることが必要”という部分だと思うのですが、ご本人たちは、本気で「50年から70年に延長されたら、創作へのモチベーションがあがる」とお考えなのでしょうか?
死後も、そんなにも長く自分の作品に執着をするのか、そんなにも長く、他の人が自由に使用し、借用し、アレンジすることを拒絶するのか、私には分かりません。
それは私が創作者ではないからでしょうか。
私は、保護期間の延長は著作者の利益が増すことには、ほとんどなりえないと思います。
(子孫への遺産という意味では多少の影響はあるでしょうが)
延長することでメリットがあるのは、出版する企業や著作権管理団体でしょう。
この要望が、出版企業や著作権管理団体から出てきたのであれば、ディズニー社同様彼らの利益に直接結びつくものですから、私にも「理解」できるのですが。
…勢いで書いてしまったため、話がまとまらなくなってしまいました。
結局何が言いたいのでしょう(笑)。
「悪法もまた法」ではありますが、これ以上改悪されてしまうと、“著作物の愛好者”のモチベーションが下がってしまいそうで、結果、将来の“想像力・創造力”の減退につながらないか心配です。
下書きで保存して後で書き直すつもりが、知らぬ間に公開設定になってました(汗)。 しかも夕方に。何故でしょう?
いくつか追記を。
著作権保護期間の延長の要望は、著作者団体以外にも出版社協会や管理団体からも出されています。
また、トラックバックをいただいたブログ「TRAIN-TRAIN」の記事『総意では無かったのか』にもあるように、全ての著作者がこれを求めているわけではありません。
こちらのブログに大変興味深い記事が紹介されていました。
私もこの考えに賛成です。
「著作権保護期間の延長、議論を尽くせ」――クリエイターや弁護士が団体発足(ITmedia News)
法改正を要望している著作者の言い分を引用しておきます。
日本文芸家協会など作家や美術家、音楽家らでつくる16団体は22日、著作者の死後50年となっている文学や音楽、美術作品などの日本での著作権保護期間を、欧米諸国並みの70年に延長するよう文化庁に要望した。
<中略>
記者会見で、作家の三田誠広文芸家協会副理事長は各団体を代表して、「(英国やフランス、ドイツ、米国など)欧米先進諸国の保護期間は死後70年。われわれだけが20年分の権利をはく奪されている」と述べた。
国際条約では外国の著作物についても、自国の法令を適用するのが原則になっているとして、同席した漫画家で日本漫画家協会常務理事の松本零士さんは「アンバランスは耐え難い。日本のマンガは地球全体に行き渡っている」と批判した。
(共同通信社)
「死後70年まで著作権保護を 権利者団体が法改正要望 」2006/9/22 東奥日報記事
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20060922010006601.asp
もうひとつ、著作権管理会社に勤める方の意見を。この方は期間延長反対の立場です。
著作権保護期間の70年への延長
※「Bund Web Site」より。
また追記。
トラックバックをいただいたやちまうさんのBlog記事「誰のため?何のため?」で紹介されているサイト『著作権保護期間の延長問題を考える国民会議』はとても参考になります。
特に、保護期間延長「賛成」「反対」それぞれのワケのページでは、延長に対する主な賛否の理由がそれぞれ比較できるようになっており、分かりやすいです。
しかし、賛成派の理由をどれだけ読んでも、「そういう理由なら、延長しても仕方がないな。」という気分になれないな…。
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著作権の保護期間を日本でも欧米に倣って70年に延長せよとの議論があります。私は最 [Read More]
Tracked on 11/10/2006 at 03:18 PM
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少なくとも権利団体のためだけにあるのではない、と信じたい。『著作権保護期間の延長問題を考える国民会議』という動きもありますね。本来守られるべき対象は何なのか、本当に著作者を保護しているのか、著作権は創作の邪魔をしていないか、作品の存在意義と利益権利を同じ土俵に置いて良いのか、etc.…が有識者や一般の人 ...... [Read More]
Tracked on 11/15/2006 at 02:50 AM

Comments
lightwardさま
初めまして。
以前、『春の祭典』のエントリにトラックバックいただき、有難うございました。
『春の祭典』の耳休めに『火の鳥』という思いつきは自分にはなかったので、新鮮でした。
『火の鳥』も、結構な大作ですよね。
それはさておき。
著作権の保護期間は、このまま放置するとミッキーと共に延びていきそうな、そんな悲しい予感がします。
>古いものがいつまでも市場に鎮座しつづければ、新しいものを生み出すモチベーションが下がってしまいますよ。
音楽や美術,映像等の創作物は、新しいものを求める風潮がありますので、生み出すモチベーションはそれほど下がらないかな?と思います。
実際、著作権で保護されるのは作品として現れている部分で、アイディアを拝借してオリジナルな作品を作る分には大丈夫だと思うので(ここまで書いて不安になりましたが、本当に大丈夫なのかしら?)。
創造は、いつの時代も独りでは出来ないものだと思います。どんな作品も、過去の作品や、同時代の他の作品に影響されて生み出されるのだと。このプロセスは、いかに保護期間が延長されようと変わることはないでしょう。
とはいえ、やはり保護期間はどんどん延長すべきではありませんよね。
過去の作品を再構築して新たに作られる創作物もあるのですから。
どこかでキリをつけるべきですし、その期間がどれくらいが妥当なのかも、ミッキーマウスの視点ではなく、創作者と消費者の視点から話し合われるべきでしょう。
Posted by: kompf | 11/28/2006 at 12:38 AM
Kompfさん、こんばんは。
少し前にTBさせていただきました。その後リンクを貼らせて頂いて
時々見に来ています。
著作権の話、コメントさせていただきますね。
著作権の保護期間は、ディズニーの著作権が切れそうになるたびに、延長されてきて今の70年という設定があるから、次は90年とか100年になって、その後も延びつづけるんでしょうね。
ということは、事実上永久に保護されるということになってしまう訳ですよね。
工業所有権でさえ出願から20年という期限があるのに、なんだかおかしいですよねえ。この期限があるから新しいものを発明しようというモチベーションが働いて、新しい発明が生まれてくるのに。
古いものがいつまでも市場に鎮座しつづければ、新しいものを生み出すモチベーションが下がってしまいますよ。
まあ、創作意欲というのはそうでもないんでしょうけど。
Posted by: lightward | 11/27/2006 at 01:11 AM
やちまうさま
気付いてませんでした。ご連絡有難うございます。
リンクの多さに、この問題への関心の高さがうかがえます。
“賛成側”の意見もきちんと聞いてみたいのですけどね。
Posted by: kompf | 11/20/2006 at 10:07 PM
既にお気付きかもしれませんが、『著作権保護期間の延長問題を考える国民会議』からバックリンクされてますね。
http://thinkcopyright.org/reference.html
私のところもリンクされてました。
Posted by: やちまう | 11/20/2006 at 01:28 AM
ユリウスさま
>時代の要請は、逆に著作権保護期間の短縮ではないのでしょうか?
私もそう思います。
保護期間の延長を要望しているクリエイターの方々(オノ・ヨーコ氏や三田誠広,松本零士氏ら)にも、それを要望するだけの理由があるのでしょうけど、拾い読みしている限りではその必要性を十分に説明しきれていない気がします。
延長を要望しているクリエイター自身も、先人の創作物に影響を受けたこともあるでしょうし、パブリック・ドメインの恩恵を受けたこともおありだと思うのですが…。
クリエイティヴ・コモンズは、ユリウスさんのサイトで目にしたのが最初だったかもしれません。
何だろう?と思ってはいたのですが…
共感できる理念です。
きちんと利用できれば、いろんな可能性が広がりそうですね。
Posted by: kompf | 11/12/2006 at 01:38 PM
kompf さま
問題提起、ありがとうございます。
そもそも著作権とは何だろうかと考えるとき、クリエーターの権利を適切に保護しながら、その著作物を他の人が公正に利用することを可能にして、人類の文化発展に寄与することを目的とする法律と思います。
特許も工業所有権も同様の考え方の基盤に立ってできていると思っています。
クリエーターでもなんでもない小生からはちょっと言いにくいのですが、時代の要請は、逆に著作権保護期間の短縮ではないのでしょうか?
人間の寿命が延びて、多くの著作権者は生きている間に著作権の恩恵をうけていると思われます。そうだとすれば、後は、次の世代の方達に、著作物を自由に扱ってもらえるようにするのが、我々世代が考えなくてはならないことだと思います。
とくにネット上の著作物はもっと緩やかな権利にすべきではないでしょうか。
小生はクリエイティヴ・コモンズhttp://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/2.1/jp/
の考えに賛同して、Blogにはその旨の表示をしています。
ご笑覧いただければ幸いです。
Posted by: ユリウス | 11/11/2006 at 12:51 AM